ETC

冷蔵庫

現在、電気冷蔵庫は当たり前のように使用されてるが、60年ほど前は氷で冷やす冷蔵庫が普通だった。

町には氷屋さんが有り、夏は忙しそうに繁盛してた。

自転車の後ろに氷をチューブで固定し、溶けないようにドンゴロス(極厚手の布で出来た玄米など入れる袋。今では使われないと思える名詞)で覆い、それは危ないと思うようなスピードで走り回ってた。

氷に一貫目(約4Kg)毎に切れ目を入れて、鋸で切り分けて各家庭に配達していた。

家庭では、上に氷を下は冷やす食品が整然と入ってた。

冷蔵庫の扉は厚く、表面は銅が張られ錆びない工夫がされてた。

扉を開く取っ手は、いかにも頑丈で梃子の応用でビシッと閉まるように造られてた。

台所用品の中で、ドッシリと王者の風格を漂わせ「俺がこの屋の主人だ。家族の食品は任せておけ・・・」と言わんばかりに、音も無く静かに佇んでいた。

今の冷蔵庫のように、キッチンと調和する・・柔な代物ではない。

夏休み合宿から帰った日、庭先であの冷蔵庫が、、、、扉を外され、上向きに転がされ、、、植木鉢になってた・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ▼ 台所では、真新しい大型の電気冷蔵庫が真っ白な衣装を纏い、すんなりと佇んでいる。

ヒンジを手で握り、今までのように力を入れ開けてみた。軽い!それが第一印象だ。力は不要で、軽く引くだけで開く。冷蔵庫も驚いただろうが、私は驚愕した。

氷も造れるんだ、親父が自慢げに話しかける。氷を造る?どのような仕組みかわからないけど、あの氷屋はどーなるんだろう?

このような光景は、アメリカでもよく見かけたそうな。

この時代、米国での氷販売は、イタリア移民が多く携わっていたようだ。

製氷から小売りまで一貫してシンジケートが取り仕切り、価格の維持、販売先の割り当て等、強制力を持ってたようだ。

マフィアもその中に紛れ込んでた。と言うか、中心的な存在だったようだ。

電気冷蔵庫の出現は、「職を取り上げる・・」と彼らが思ったことは容易に察しが付く。

 ▼会議にも様々な目的がある

命令、情報交換、相談、決定、実行、プレゼン、Etc、目的がはっきりしている事で会議の内容が違ってくる。

困った時は、会議を開き、様々な意見を吸い上げ、問題点を浮き彫りにし、対策を立てる。これが会議の本流のように思われる。

氷屋のシンジケートも会議を開いた。

「問題点ははっきりしている。電気冷蔵庫の出現で、売り上げが落ちている。」「スパゲッティが食えなくなってきた。ぺペロンチーノさえ早晩食えなくなる。」「どーする?」

ボルサリーノ風ソフト帽が、怒りで吹き飛ばされんばかりの勢いで、ゴットファーザー、、、いや、議長が参加者全員に聞いた。

言われるまでも無く、参加者全員が肌で感じている。問題は深刻だ。今までのように、他者が仕事を取りに来たのとは訳が違う。そんなことなら簡単に解決できる。実績もある。

今回は相手が悪い。電気を供給しているのは、アメリカ合衆国だ。軍隊まで持っている。カポネさえ投獄された。とても勝てる相手では無い。

様々な意見が出た。「電線を切ったらどーだ」「発電所を爆破しろ」「氷を買えと脅したらどーだ」等、真に乱暴な意見から「電気代より安くして販売したら」「24時間配達しよう」「冷蔵庫をおまけにつけよう」といった至極真面目な意見まで出された。

しかし、これと言った意見が出ないで7日目を迎えた。参加者全員、疲労の極限に達していた。これまでかと思われた夕方近く、ある若い男が立ち上がって、 持論を話し出した。

 ▼我々は「便利」に負けた

会場はざわついた。「便利てどこのファミリーだ?」「ぶっつぶせ!戦争だ!」どーも物騒な会議だ。戦う相手が見つかれば一斉に同じ方向を向く。

「相手はファミリーではない。」彼は静かに語った。世の人は生活に潤い、豊かさ、安心を求めて動く。その中に“便利”が大々的に現れてきた。電気冷蔵庫の便利さは氷冷蔵庫より勝っている。だから、いくら物理的な抵抗をしても勝ち目は無い。

じゃ、どうすれば勝てるんだ?このまま負けてしまえと言うのか?氷屋は消えてしまえと言うことなのか?

そうでは無い、、便利の最先端を実現することで、我々はリーダーになれる。


「若いの、理屈は判った。具体的にどうするんだ」老ゴットファーザーが静かに聴いた。会場がシーンとなって固唾を飲み込み彼の顔に視線が向けられた。

冷やすのは電気に任そう。冷やす商品を我々が供給するのだ。そうすれば売り上げは飛躍的に伸びる。幸い。製氷工場から小売店まで一貫したラインがすでに有る。朝7時から夜の11時まで生活に必要な商品を提供するのだ。

「判ったか野郎ども!必要な商品を書き出せ!」と結論が出た瞬間、一気に会場全体が動き出した。

テーマ販売の出現だ。書き出された商品アイテムは、1万以上になった。

それまでは、肉屋さんはお肉を、八百屋さんは野菜を的な販売が普通だった。テーマに合わせて商品を販売する等、誰もが考えてもしなかった。スーパーは、何々屋さんの集合体で、テーマ販売では無い。

小売店では、冷蔵庫の前面をガラス扉で中が見えるようにし、配送は氷が溶けないシステムが生かされた。

販売方式の名前は便利を冠して「Convenience」コンビニの出現だ。組織は商品を必要とする時間帯を取って「seveneleven」セブンイレブンとした。

これ以後、販売方式は全世界を席巻してる。シンジケートは、ショバ代を取るのが上手だ。組織は強固になり、発展している。

電気冷蔵庫が出現した時のように、パソコン、スマホが今や生活の主流を占めるようになってきた。

まだ、コンビニ出現時のような結論は出ていないが、早晩出るに違いない。

今回は酒屋さんが担うような気がしてならない。


この物語はフィクションで構成されています。登場人物等は実在とは関係有りません。