ETC

あるお店

その店は小さい。4畳半ほどの大きさにお酒がびっしり並んでる。

お店に入った瞬間、ジワーと温かみが伝わる。取り立ててどーだと言うお店ではないが、整然と並べられたお酒には値札が付いている。

安くない、が第一印象だ。

レジ前に立っていた奥さんと思われる上品な老女性が「いらっしゃい」と声をかけた。

黙って日本酒を見ていると「今ね、そこの南部美人が面白いと思うんですよ」と声をかけてきた。

どー面白いのかわからないまま手に取ってみた。「味が奥深いと思うんです。」値札には1500円と消費税と記載されていた。

探してる日本酒ではないのでそのまま棚に返した。「〆張鶴がないなー」と思いながら棚を一周見た。「何かお探しですか?」と聞かれたので「〆張鶴は無いでしょうね」と呟くように聞いてみた。

〆張鶴ですか、、と言いながら「この商品でしょうか?」とレジの表示画面を指さした。

画面には〆張鶴が表示されている。「この商品です」と答えると、2日後には店に入りますがいかがでしょうか?と聞いてくる。

「2日後に入るのならオーダーしてみようか。どこに行っても無いしなぁ」そう思い、じゃお願いします。と言ってみた。

奥さんは、画面にバーコードリーダーを当てた。するとどーだろう、、、レジに金額が表示された。高くもないが安くもない。「いいですよ」と言った瞬間、レシートが出てきた。

奥さんはもう一度バーコードリーダーを画面に当てた。ピッと音がしたが何の変化もない。不思議に思って聞いてみた。

「ああ、、今オーダーしたので2日後には店に入ります」

代金を支払いレシートを受け取り店を出た。

振り返ってみると、昭和の匂いのする古臭い店だ。決して近代的な機器などあるはずが無いと思われる店だ。

大丈夫だろうか?画面でバーコードを読みこんで販売とオーダーをしてる。どこにも見かけないシステムだ。少しの疑念を持ちながらその日は帰った。

2日後会社の帰り件の店に立ち寄った。

「いらっしゃい。ああ、〆張鶴入ってますよ」奥さんがレジ後ろの棚からプチプチに巻かれた〆張鶴をカウンターの上に置いた。

会社では、最先端機器を扱ってる。勿論パソコンはお手の物だ。こんな昭和の匂いのする老夫婦が経営する店では導入は考えられないし、ましてや老人には使えない。

しかし、、、、現実に思う商品が手に入った。結果だけ見れば、最新のシステムだとは仕事柄理解できる。

しかも簡単に動作させている。「次回来られるとき、この名刺を提示して下さい。店長割引出来ますから」と名刺を手渡してくれた。

ありがと、と言いながら店を出た。

帰ってソファーに座りながら〆張鶴を飲んだ。美味しい。この味は好きだ。袋に入れられてた小さな二つ折りのチラシを見た。

様々な日本酒が画像と共に記載されている。裏にはQRコードでお店のホームページが案内されている。

仕事用のカバンからタブレットを出し、QRを読みこんでみた。

商品画像と共に商品内容が記載されている。画像の下にはバーコドが表示されている。

「そーか、、このバーコードを奥さんは画面からレジに読み込ませたのだ。」

2回目のピッはオーダーとか言ってた。しかしどの画面にもオーダー画面が無い。

そーかぁ、、オーダー画面はお店独自なのだ。そこまで理解した時、背中が震えてきた。

画面のバーコードを読みこませてる、、、??有りそうで見たことが無い。QRコードなら解るが、バーコードは、、、。コップの〆張鶴を一気に飲み干した。

あの店、見た目も経営者も古い。しかも小さい店だ。ただの酒やだと思っていたが、やってることは最新だ。

手渡された名刺を見た。そこにはバーコードが表示されている。このバーコドをレジで読みこませたら割引が出ることは簡単に理解できる。単純なシステムだ。

会社では、ポイントカードを売っている。お客様が買った日時、商品、ポイント数が上書きで表示するシステムだ。イコカと同じように表示する。

このカード、一枚の販売金額は高い。酒屋のカードはただの紙だ。安い。簡単に大量に印刷できる。

まさか、、、スマホでは対応してないだろう、、、と思いQRを読みこませた。きっちり対応してる。

あの店、見た目と中身が違う、店に無い商品も楽々売ってる。しかも簡単にだ、、、そう思ったとき、酔いが一段と回ってきた。

ポイントカード見本。

左が最新機器に対応するポイントカード。右が昭和の匂いのする店カード。